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about a manner

ちょっと何言ってるかよくわかりません

繊維業界、繊維商社について - シューカツセイさん向け

繊維

硬派で感情的なロックアンドロールがいま聞きたい(ロリコンのリー・ルイスからどういう形でロックなパッションが生まれてくるのだろう)。 

 



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突然ですがシューカツ講座

さ、シューカツの季節ですね。

弊社にもシューカツセイさんがたくさんやってきます。リクスーの子、トレンドでキメキメの子から部活動のユニフォームの子まで(!)。いろんな方が参列されます。

 

「繊維産業は斜陽」と言われ続けてはいますが、ひっきりなしに訪れるシューカツセイさんを見ていると、「なんや人気あんねんなー」と思ってしまいます。

社内のそこかしこにいはるので、特別意識してないつもりでも自然と背筋が伸びてしまいます。



ところで、繊維業界は構造が複雑で、業界のカラーも古くさくて、少し独特。そのため情報収集に苦労した覚えがあります。

ということで、今日は繊維商社への就職を希望するシューカツセイさんのために何か書いてみようと思います。予め宣言しておきますが、ここに書いてあることは7割嘘です。が、3割はガチです。

 

 

 

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早速ですが、志望動機を考えるのは大変面倒くさいし、無駄な作業だと思うので、繊維商社の総合職を目指している方のために私が考えました。

 

「衣食住の中でも最も身近な衣服に強い関心があって」、「あらゆる業界の中でもモノの回転が早い繊維業界に身を置くことでビジネスマンとしてスキルアップをしたい」、「キャリアアップを果たして、将来は海外マーケットで勝負したい。国内外で売りまくりたい」。

 

ザ・これです。

これを笑顔で元気よく、はっきりとお伝えしてください。腹筋したり、ダンベル持ち上げたりしながら叫ぶと尚良しです。髪はポマードでオールバックにセットがデフォです。

それから「商社は人」という少し埃臭い考え方が根強いので、「御社の社長のようなかっこいい漢になりたいっす!」とか適当に言っておけばいいと思います。因みに私は今でも営業のときに「男前ですね!」と連呼してコストをカットし続けております。

 

これで不採用だった場合、人間性に関してあなた自身が気づいていない著しく深刻な問題があると思われます。がんばれー!

 

 

女性の総合職採用について頻繁に質問されますが、母数は正直少ないと思います。業界全体では10%以下というのがバックリとした印象。


繊維専門商社で売上ぶっちぎり一位の企業様は女性総合職が一人だったはず(2013年)。

女性のキャリアステップが平坦な道ではないことは、各社の役員名簿をサイトで眺めると一目瞭然。

とは言え採用がゼロというわけではありません。蝶理株式会社では初の女性役員が誕生したそうです。

 

蝶理、初の女性役員 | 繊研プラス: ファッションビジネス専門紙、繊研新聞

 

繊維商社に勤務する友人が数人いるのですが、彼女達の人間性にはいくつかの共通項があります。

 

  1. "他人が認める"超サバサバ人間
  2. 愛想笑いと明らかにばれる愛想笑いが上手
  3. ベタな映画で嗚咽するほど情に厚い
  4. 英語力が高い(留学経験1年以上)
  5. ビールより日本酒

 

(2)に関して補足。

愛想笑いと明らかにばれる愛想笑いをする

→先輩「お前それ全然思ってないやろ!」

→「思ってますよー、あははぁ」

→先輩「いや、だからぁーっ!!」という抱腹絶倒の会話の流れが生まれます。

 

シューカツ教に洗脳された「絵に描いたようなバリバリのキャリアウーマンにあこがれる人」の需要は高くないです。

そういう役割の人間(男性)は既に社内にいっぱいいるから。

 

以上の共通項を集約して、私が思う繊維商社の総合職に合格しやすそうな女性像を一言でお伝えすると、「"仕事できる"オッサンに好かれそうな女性」です。

あくまでも「渋くてイケてるオッサンに」がポイント、ノットムッツリスケベオッサン。したたかにがんばれー!

 

 

「服好きであること」が志望の軸で、「人並み以上に服に対して何らかの知識を持っていること」はボーナスポイントという感じでしょうか。

逆に言うと、強く推すところではありません。シューカツ本などで広く人間性と呼ばれるものについてアピールを強くしたほうが採用の確率は高くなると思います(いい服を知ってる人が必ずしもいい社会人ではないのです)。

とは言え、以下触れるように企画開発力の向上を企図する企業は多く、実際シューカツ時に知り合った方々で、一社に一人くらいは企画や生産管理系というモノ作り部署に最初から配属されている方がいらっしゃる。

「どうしても服」という思いがあれば、

 

  • 自分は何を知っているのか
  • 何故それに興味を持ったのか
  • 実際に何で調べたのか、どれくらいの時間と労力がかかったのか
  • (調べたものを具体的に実践した内容を提示)
  • それらを「たとえば」どういう事業にしたいのか

 

を「簡単に」お話するのも悪くないかもしれません。あくまで簡単に、ね!


服オタクの繊維商社へのシューカツに関して、もうひとつ注意しておくべきポイントがあります。それは会社によって強みとなる繊維事業が異なるということです。


決算報告を見ることで、ファッション繊維、制服などの非ファッション繊維、非衣料繊維の売上シェアがわかるはずです。

ファッション繊維がやりたかったのに、車のシートベルトを扱うことになった、というオチもありえますので、その点は事前に調査、覚悟すべきです(配属は専ら社内事情に基づくので、運次第ではありますが)。



色々つらいことがあると思いますが、希望を捨てずにがんばってください。

 

 

 

 

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決算報告を一丁前に振り返る

ここまでは割とナマの体験談。以下は実数を見てみようと思います。


マーケティング業務に専門的に従事していない人間なので、随分と不正確でわかりにくいかと思いますが、各社の決算報告と繊研新聞から今年度の業界を方向性をまとめて行きます。


余談ですが、「誰からもあまり好かれずに、都合のいいときばかり頼られるのに、問題が起きると真っ先にしばきあげられる」という意味において、繊維商社はアパレル業界のモックキング、慈善事業じみているところがあると私は思います(利益率が超低いんだよ。疲れちゃうよ)。

 

道化の民俗学 (岩波現代文庫)

道化の民俗学 (岩波現代文庫)

 

 

 

商社の決算報告を見る…前に、小売りとメーカーの決算を見てみましょう。商社の取引先である川中、川下の動向は、必ず商社の戦術に影響するからです。


まず川下。

<クール>、<カワイイ>、<オタク>、<ノームコア>、<物語性>、<Hedi Slimane効果>とソフト(コンテンツ)に関してはなんだかんだ盛り上がっている感がある今日この頃。

もっとベタに、街ゆく人々を眺めて見ても、去年はディップダイ加工、肩掛けニット、ニューバランス、今年に入って、オールホワイト、膝下丈のスカートと目に見えるアイテム、スタイリングのトレンド(ソフト)がこの2年くらい継続して生まれています。

 

定点観測・第401回 ストリートファッション マーケティング ウェブマガジン ACROSS(アクロス)

 

そういう比較的感度の高い<ファッション>を扱う小売業の売上は堅調で、各分野のリーディングカンパニーは増収増益を達成している模様。


気になるのは二極化が進んでいること。特にボトムゾーンが不調で、量販店はしまむらがかろうじて増収、だが5%の減益、他社は昨対で減益幅が大きい。東南アジアの労働コストの上昇、為替要因が影響しています。


例外的なのは天下のユニクロ。生産ロットがアホほどデカイので製造コストを低く抑えられること、また海外での売上構成比が他社より高いこと(=為替の影響が受けにくい=利益率が高い)がその要因かと。

 

百貨店売上高16年ぶり増 13年、高額品けん引 :日本経済新聞

 

8016 (株)オンワードホールディングス (オンワード) ニュース :日経会社情報:マーケット :日本経済新聞

 

ファーストリテイリングが過去最高益 海外ユニクロ好調も株価不振が続くワケ | 繊維・アパレル業 - NewSphere

 

 

川中、ハード(糸、生地、加工、縫製、物流)においては悲壮感が漂っています。

 

中間業者が多い=生産に関係する人間が多い=薄利多売傾向が強く、輸入浸透率が96%超(100枚の衣服のうち、国産は4枚もないということです)の繊維業界は、去年の秋口からの円安、止まらない海外人件費と綿花やウールといった原材費、石油価格の高騰、更に今春から増税というマイナス要素に見舞われて、惨憺たる状況。

 

USドル/円の為替レートの推移 - 世界経済のネタ帳

 

原油価格の推移 - 世界経済のネタ帳

 

綿花価格の推移 - 世界経済のネタ帳

 

一応書いておくと石油は合繊繊維や染料や洗剤の原料でもあります。輸送費用や火力発電、電気料金に悪影響が出るだけではありません。

為替や原油の推移は日本での実生活にダイレクトに影響しないため、いまいちピンと来にくいですが、「消費税が明確な予告もなく2、3年のうちに30%以上跳ね上がった」と仮定すると、現状のヤバさが少しは想像できるかと思います。



川中で好調なのは合繊メーカー。好調の理由は早くから東南アジアに工場を移転&製品事業を展開できたこと、非衣料事業はまだまだ需要があること。

これらが原油などのコスト増加をカバーできているようで、合繊大手6社の繊維事業は増益になっている。



余談ですが、私が合繊メーカーや産業資材も扱っている繊維商社の採用面接を受けた際に「産業用資材やユニフォームの担当になっても大丈夫?」と何度も聞かれました(当たり前ですが「いやどす」と清楚に言っても大体落とされます。落ち込まずに、それでも採用してくれるところに辿り着けばいいのです)。

 

 

大手紡績企業7社は製品事業ASEAN事業が好調で全社とも増収だったものの、原価高はカバーできずに改益改善は3社に留まっている。

一般消費者の目が厳しく、コスト圧迫を商品の値段に転嫁できない、「「コモディティ(汎用商品)」を中心に価格が合わなくなってきている」ため、品質の高度化を計画するメーカーさんが多い様子。わかりやすくドライタッチ、吸湿速感機能を持った糸の開発に関する記事を最近よく見かけます。

 

 

大手染色整理加工企業6社は最も悲惨で、数年来苦戦が続いている。

増益になっている企業は加工業以外の事業で利益を生み出したり、固定費や物流費を削減して、なんとか利益を確保した模様。

石油価格と電力値上げに加え、増税による「責任転嫁」が致命的なダメージになりうるとして(加工料金の4割以上が原価になっていて、産業維持ができないレベルだそう)、日本染色協会が2014年1月27日に各社へ嘆願書を出している。

「加工業がなくなったら、産地じゃねえがや!」という一宮のオッチャンの言葉が思い出されました。

 

日本染色協会

http://www.nissenkyo.or.jp/pdf/topic_20140127_1.pdf

「国内相手の加工業だけではどうしようもない」という構図がいよいよ鮮明に。




ざっとこんなところでしょうか。川中、川下の状況を把握したところで繊維商社の決算を見てみよう。


繊維商社の主な事業はOEM事業ですが、上記と同様のマイナス要因により利益率が急激に悪化しています。


同5月2日付記事によると、繊維単体商社の雄、日鉄住金物産、ヤギの二社は利益率が円高ピーク時の2012年度が3.4%から下落。2013年度上期は2%を切っている。

結果として、平成25年度決算は日鉄住金物産の繊維事業部は売上が5.4%増の1838億円にも関わらず、経常利益は29.8%減の42億円。ヤギも売上5.4%増、経常利益は25.2%減。

二社に限らずほとんどの大手繊維商社が「5%ほどの増収、20%以上の大幅減益」という感じ。

324億円という過去最高益をたたき出した伊藤忠商事でさえ、OEM事業に関しては「ややマイナス」(2014年5月9日付、3面)。

 

伊藤忠・繊維カンパニーが最高益更新 | BRAND TOPICS | BUSINESS | WWD JAPAN.COM

 

 

<円安基調で如何に収益を確保するか>が、換言すると<為替に左右されないビジネスモデルの構築>が各社の最重要課題になっている。

伊藤忠商事はグローバル度で群を抜いていて、他の企業が同じ規模感のことをできるようには到底思えないが、業界紙に掲載されていた事業計画の骨子だけをまとめておく。


  1. 優良事業の投資と売買
  2. 川下(ブランドビジネスなど)の強化
  3. 多岐にわたる関連会社を最大限活用した海外販売の強化

 

日鉄住金物産、ヤギもほぼ同様の計画の模様。

  1. 海外での販売強化(ASEAN生産、ASEAN、中国販売など)
  2. 川下への事業展開(ブランドビジネス
  3. 生産性の向上
  4. 生産のASEANシフト

 

 

(2)に関して。

繊維単体商社のブランド取得の記事を去年の中頃からよく見かけるようになったが、そのブランドは大抵「スポーツ・カジュアル関係」と「バッグなどの雑貨関係」が多かった。要はトレンド性がそう高くない=在庫リスクの小さい安牌


LANVINの国内販売権を持つ伊藤忠、モンクレールやマッキントッシュの八木通商のように「好感度なファッションブランド」への投資はリスクが大きく、また商社機能とは全く異なるノウハウが必要になるため、積極的には乗り出さない様子。

 

(3)に関して。

「生産性の向上」が具体的に何を意味するのか文面からはわからないが、「正確に早く」という業務の基本を徹底して、取引先からの信頼を得て他社のシェアを奪う、ということだと思われる。

ヤギのスローガンは「ニューパワー、ニュースピード」。とてもわかりやすい。

 

(4)に関して。

日鉄住金物産の現在の全体売上に占める中国生産の比率72.5%を今年度中に70%以下にするそう。リードタイムが短く、技術の高い中国では中高級品、東南アジアでは量販向けやユニフォームという使い分けを各社は模索しているよう。

 

業界全体でも2012年度の衣料品輸入額に占める中国産の比率は金額ベースで74%なので、概ね業界の流れとも一致する。今年の生産比の縮小具合を見ていても、恐らく70%くらいに落ち着くような気がする。

が、今後それ以上低くなっていくかは、ASEANの不安定な政治情勢、相変わらずの停電と断水、「道がぼこぼこでバイクに長時間乗っていると痔にならざるをえない」という同期の話を聞いてる分には不透明。


ASEAN生産にシフトしても原料調達コスト、輸送コスト、人件費は増加しており、実質は関税分くらいの利益にしかつながらない模様。しかもリードタイムは2ヶ月ほどかかるため、日本的な小ロットを高回転させるというモデルには適さない。

利益を生み出す積極的な策というよりは、あくまでも消極的な抑制策。


中国で20年かかった拠点構築が何年でできるのか。原料をどこから持ってくるのかなど、課題は多い。

 

 

 

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商社にも色々な出自があるが、生地屋として創業して、現在も産地と密に生地を開発している商社は、(5)円安の中で高付加価値商品を作る=高利益率商品の開発を計画している(「どうしても服」タイプの人は糸か生地に強い商社さんを受けるといいと思います。会社規模と勤務地にこだわりがなければ、新潟や福井や京都などに本社を構える産元商社に片っ端から電話するのもありだと思います)。

 

ヤギは素材からの一気通貫モデルの強化に乗り出すそう。 

名岐地区のコンバーター的な商社も国産意匠糸遣いの生地を国内外の生地展で積極的にアパレルメーカーにプッシュしている。実際2月の尾州マテリアル展も最多来場者数だったと聞いた。


2013年の銀座ファッションウィーク中の三越伊勢丹、銀座松屋の国産素材への取り組みが象徴的だったが、消費者サイドでエシカルファッション、サスティナブルファッションへの注目が高まる中、そこをうまく狙った国産素材が開発されはじめている。

 

 

ところで「素材としての価値が高いこと」は「消費者目線で価値が高いこと」には必ずしも結びつかない。「消費者の幅広い共感を得るために量化できる価値を提案=機能主義に陥るとまたマーケットの均質化が進む(と、私がつまんない)こと」について、少し書こうと思っていたのだけど(というか、本当はこれを主な内容にしようと思っていた)、今回は保留。

あまりに主観的な好みが反映されすぎるから。もう少し別のプローチから、好きなものを好きに書きたい。

 

素材関連でいくと、豊島のサクラクレパスとの契約締結が興味深い。どんな生地、製品ができて、どういうことを消費者に見せられて、どういう形で収益を確保するのだろう。

 

豊島がサクラクレパスと契約 カラフルなテキスタイルやアパレル製造 | Fashionsnap.com

 

 

 

 

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  • 商品価格は横ばいか、少し値上がり。
  • 原産国表示で東南アジアの国名を見かける機会が5%くらい増える。
  • 今まで見た事がなかった素材感のアイテムがぎりぎり買える値段で出てくる。

 

消費者目線では、今年のアパレル業界においては大雑把にこういう変化が目に見えるだろう。

そしてその中で21世紀ファッション界の無頼派である、国内のデザイナーは何できるのか、何をするのか、というところに注目したい。